トトロ的存在 おりも政夫 ボーイズラブ文庫


グスッと半泣き状態で、先ほどからずっと赤星に食ってかかっている青山。友生の大きな瞳が驚きに見開く。魔王は、それこそ花から花へと移り変わる蝶のように浮き名を振り撒いていた。舌と舌が触れ合って、軽くこすられる。彼らに向かって口を開こうとした滝川は、少し考え込むように傍らの基を見つめた。海王の短い問いは、的確に的(まと)を射ていた。

くらりと、眩暈がした。

あえて知られたくもなかったし、と嘉瑞は落ちこむ。「好きだからキスした」。

自分が受け持ちをしているクラスの、しかも男子生徒にキスをされた!今時の子なら、嫌がらせでこんなことをするのかもしれなかったが……すごくショックだった。体育館には、僕と田中の二人だけだった。昂の言い方にムッとしてわけも分からず言い返しただけなのに、昂がそんなに怒るとは予想外である。「眠らせてくれるの?」。「だからこそ、だろ。杏と結婚するって言や、全部解決」。「まあ、経験ないなら、こんなに簡単についてこないか」。「朝帰りか?」。

「怖いさ……」。先の戦いで父や母を失い、幼い頃からの友であり側近(そっきん)だったローゼンまで失った。「悪いか?いちゃつこうって言っただろ」。そして頭だけを水面から覗かせると、空中に浮かんでいる青年を優しい眼差(まなざ)しで見つめた。リゼスと一緒にいる時に籠から出して、ボール遊びの相手をさせてもらえるほどオレにも懐いてくれているが、オレひとりだけの時は籠の外へ出してやることもしない。水貴は最後の言葉を少々きつめに言い切ると、いつのまに入れたのか優雅な手つきで海王にそっと美茶を差し出した。ケニーの戸惑いを溶かすような笑みを、諒は浮かべた。

「演技なんかじゃ…」。大学が忙しいから。「いつ、私がサーファだと分かったのです?エリクセルの若く美しい王子……」。「どうしてもっと早く教えてくださらなかったのですか?由良は……もっと早く知りたかった」。


ボーイズラブ小説作品紹介


浅倉家の嫡男は、元服をもって生涯宝生家当主に仕えねばならない――そんな古くさいしきたりのせいで、高校入学と同時に、幼なじみで同級生の千裕にお仕えすることになってしまった梁。昨日まで友達同士だったのに、いきなりご主人様扱いなんて、できるわけない!千裕もきっと同じ気持ちだと思っていたのに、元服したその夜から、千裕の態度が一変。「おまえのすべてはオレのもの……」。だなんて言って、身体まで求めてくるなんて、イヤなのにいいなりになってしまうのは、どうして――。

タイトル:優しくて棘がある
著 者 名:有栖川ケイ
レーベル:ダリア文庫e
発 行 元:二見書房

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